筑波大学体育系ヒューマン・ハイ・パフォーマンス先端研究センター

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★【ニュースリリース】高木教授らの研究グループがパラ水泳選手の泳動作に関する研究成果を発表

パラ水泳選手の泳動作は健常水泳選手にとっては非効率?

【研究成果のポイント】

1.  健常水泳選手においては一かきで進む距離(ストローク長)が高いパフォーマンスをあげる鍵と言われている一方、

片前腕部欠損選手においては腕を回す頻度(ストローク頻度)が重要で    あることが分かりました。

2.  片前腕部欠損選手は健側の肩に比べ、患側の肩を大きく傾けて腕のかきを行っていること、

またエリート片前腕部欠損選手は高いストローク頻度を達成するためにこれまでの常識では非効率とされている手足のタイミングで泳いでいることが分かりました。

3.  本研究の結果からはパラリンピック選手のパフォーマンス向上のためには健常選手からすると一見非効率と思われる技能が必要とされることが分かりました。

この事から、パラリンピック水泳選手指導に際しては、健常選手指導とは異なる着想が必要であるとともに、非効率であるとされる動きに伴う傷害予防対策等も重要であることが示唆されます。

 

【研究の内容と成果】

国立大学法人 筑波大学体育系 高木英樹教授、齊藤まゆみ准教授、言上智洋研究員らの研究グループは同大学が保有する実験用海流水槽及び水中動作解析システムを用いて片前腕部欠損選手のクロール泳技術の解明に取り組みました。

クロール泳では左右一回ずつの腕のかきの間に6回のキックを行っており、水泳選手はこの腕と脚の異なるリズムの調整を、上半身と下半身を体軸に対して回転させる「ローリング」という技術を用いて行っています。これらの泳技術に関して健常水泳選手については研究が進んでいるものの、パラリンピック選手に関しては科学的な知見はこれまでほとんどありませんでした。本研究は、スポーツ庁による「スポーツ研究イノベーション拠点形成プロジェクト(SRIP)」委託事業の一環として、一般社団法人日本身体障がい者水泳連盟の協力を得て、片前腕部欠損選手の動作を三次元的に計測・定量化しました。

 

図. 片前腕部欠損パラリンピック水泳選手のローリング角度と分析対象セグメントの定義

 

 

その結果、エリート片前腕部欠損選手は他の選手に比べて非常に高いストローク頻度を達成することで高いパフォーマンスを発揮していることが分かりました。一方で片前腕部欠損選手は多くの点で健常選手では非効率とされている動きをしていることが分かりました。この傾向は特にエリート片前腕部欠損選手において顕著であり、エリート片前腕部欠損選手は動きの連動性や対称性を犠牲にしてでも高いストローク頻度を達成しようとしていることが示唆されました。この結果は競技力向上と障害発生の関係が片前腕部欠損選手においては健常選手よりもはるかに高い可能性を示しており、障がい者スポーツにおける傷害予防および専門性の重要性を示唆しています。

本研究成果は、ノルウェー体育大学、シドニー大学との国際共同研究として進められ、英国の国際科学誌Sports Biomechanicsにおいて2019年9月27日付けで先行公開されました。

 

【掲載論文】

Gonjo, T., Kishimoto, T., Sanders, R., Saito, M., & Takagi, H. (2019). Front crawl body roll characteristics in a Paralympic medallist and national level swimmers with unilateral arm amputation. Sports Biomechanics, 1-17. doi:10.1080/14763141.2019.1654536

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/14763141.2019.1654536

 

【問い合わせ先】

高木英樹(たかぎ ひでき)

筑波大学体育系・教授

〒305-8574 茨城県つくば市天王台1-1-1

 

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