筑波大学体育系ヒューマン・ハイ・パフォーマンス先端研究センター(ARIHHP)は、ヒトの心身の活力を最適化することを目指した次世代健康スポーツ科学を推進します。
ARIHHPは本学の卓越した健康・スポーツ科学研究拠点を基盤とし、最先端の生命・認知脳科学及び先端スポーツテクノロジーを導入した次世代健康スポーツ科学を推進します。その成果に基づき、HHP実現を目指した方策として、運動・栄養・休養(睡眠)プログラムやスポーツ技術・用具、並びにそれらを統合した運動プログラムやトレーニング法を開発・応用し、それらの成果を政策提言や社会体育、並びに人材育成を通して、アスリートのみならず子どもから高齢者や働く人々や病体まで、広く社会へ還元することを目指します。
ARIHHPのロゴマークは、心身における運動効果の根元をなす「超回復理論」を表現しています。
これまでの科学技術は、人の身体能力が低いことを前提に、それを支援、拡張、補完することで発展し続けてきました。しかし、人の身体能力は低いが、適度なトレーニングで高められることをこれまでスポーツ科学は証明してきました。ヒトのパフォーマンス(身体活動能力)は、筋力や持久力などの体力だけでなく、技術・用具や代謝能力、ストレス耐性、注意や判断などの認知パフォーマンス、コミュニケーション能力など様々なファクターにより決定されます。
それらを心・技・体を基盤とし多角度的、総合的に検証することで人間の総合的な身体活動能力の最適化(ヒューマン・ハイ・パフォーマンス:HHP)を実現し、元気でたくましい人間をつくり、人と社会の身心の活力増進を目指します。
この15年我々は体育・スポーツ科学を世界に通用し、社会に寄与できるものとすべく、中堅の教官でコアを形成。21世紀COEや文科省特別研究など主要な国のプロジェクトを獲得・推進し、研鑽を積んできました。折りしも政府は健康長寿国の礎となるスポーツ立国戦略を策定し、それらを推進するアカデミアとして今こそ我々が力を発揮する時と言えるでしょう。地球規模で蔓延する「心身の活力低下問題」は深刻です。これまで、ヒトの能力は低いことを前提に、それを支援、拡張、補完する科学技術が発展してきました。しかし我々の次世代スポーツ科学では、運動、栄養、休養(睡眠)のバランスを再検討した革新的なトレーニングを通じて、本来潜在的に高いヒトの能力を効率よく引き出すことができると考えています。ARIHHPはこうしたミッションを実現するために、コンセプトを共有する国内外の多くの大学、研究機関と連携しながら、強い基礎研究を推進してまいります。
ARIHHPはセンター長が組織運営を統括します。センター長は、拠点運営の統括、課題審査委員会の開催、拠点内外との調整を行います。管理・運営の重要事項は 運営委員会で協議・決定し、公募課題の公募や採択等はこの委員会で審議・決定します。ARIHHPでは拠点内に事務組織 を置き、共同研究に係る「総務」、「経理(予算 管理)」、「渉外」のほか、外部資金獲得や施設インフラ整備および共同研究の支援業務を担う「研究支援」を設けています。共同利用研究、拠点の諸活動の経費の一部 は運営委員会の決定を受けて、研究代表者に配分されます。課題審査委員会は、応募研究課題の分類・審査を行い、運営委員会に報告します。
筑波大学体育系は日本の体育・健康スポーツ科学のリーダーとして、常に国民の体力・健康増進、並びに競技力向上のための国家的要請に応えてきました。前身の東京高等師範学校・嘉納治五郎校長以来、多くの留学生を受入れ、先進的体育人材を日本や世界に輩出してきたことから、アジアでも中心的存在として認知されています。 体育系に新設されたARIHHPは、ルーツである体操伝習所や体育研究所、そして東京教育大学スポーツ研究所(1960-1977)から幾度となく名前や場所を変えつつも、その神髄を変わらぬ”桐の葉”に宿し、産学官との連携を通じた次世代健康スポーツ科学を推進します。
第18回オリンピック競技大会(1964東京)を5年後に控えた1960(昭35)年、”スポ研”(正式名:東京教育大学体育学部付置スポーツ研究施設)は誕生した。運動生理学・コーチ学・運動力学の3部門が設置され、活発に研究活動が進められた。その成果の多くは体育学研究・体力科学等の関連学会誌に掲載されると同時に、スポーツ研究所報(第1号~14号)として公表された(原著論文76篇・資料12篇)。 筑波大学への統合移転完了とともに、1977(昭52)年17年間の活動を終え閉所した。”スポ研”開所から半世紀以上の時を経て、新たにヒューマン・ハイ・パフォーマンス先端研究センターの誕生を祝い、21世紀の時代に相応しい日本を代表するセンターとして、先端研究・人材育成・国際交流など、充実・発展を期待したい。
組織と研究内容の概要
部門 | 研究内容 |
---|---|
(1)運動生理学 | 運動時の身体機能・エネルギー代謝・疲労・栄養 |
(2)運動力学 | 動作分析学・施設用具の物理学的研究・運動技能の力学 |
(3)コーチ学 | スポーツ適性・スポーツ心理・管理・トレーニング・ 種目別のコーチ法 |
スタッフ:教授3名 助教授3名 助手2名 教務員1名 当初、文部省へのスポ研設置申請時には、5部門(運動生理学、スポーツ医学、運動力学、コーチ学、調査統計)と39名のスタッフ(教授5名、助教授5名、助手10名、教務員5名、その他14名(事務官、看護師など))が予定されていました。しかし、実現したのは上記の3部門と9名のスタッフ(多くは体育学部との併任)でした。
東京教育大学体育学部の校舎は、2階建てだった体育研究所の校舎に3階(建物上部の白色部分)を増築したものでした。写真右端に見える袖部分の建物が”スポ研”です。この校舎は残念ながら筑波移転時に取り壊され、現在は渋谷区スポーツセンターに姿を変えています。 体育学部正門(東京教育大学新聞OB会より)
スポ研の初代所長は、”名取ファイバー”で知られる世界的筋生理学者・名取禮二氏でした。名取教授らは所報第1号(1961年)において、スポ研設置時に理想とした各部門や体育学部との垣根を越えて一つの目的に向かう「総合研究」を展開。15名の同僚とともに、陸上競技のクラウチングスタート、卓球のストローク、および柔道の腰技における運動習熟機構を極めて学際的に分析しました。各部門は、運動・体力の基礎研究から陸上、柔道、相撲、なわ跳び、登山など多岐に渡る実践的スポーツ研究までを幅広く推進。多くのスポーツ研究・指導者を輩出しながら1964年東京五輪等をサポートするなど、体育・スポーツ界に大きく貢献しました。所報最終刊(14号、1976年)では、閉所を目前に控えた当時のスポ研施設長・多和健雄教授(球技講座、サッカー)が私たち(筑波大学)への思いを記しています。
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