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【プレスリリース】桑水隆多(大学院生)、征矢英昭教授が有酸素運動中の瞳孔動態に関する研究成果を発表


本研究の概要図

桑水隆多院生と征矢英昭教授・ARIHHP副センター長(専門:運動生化学・神経内分泌学・スポーツ神経科学)らの「瞳孔は運動負荷の増加に伴い非線形的に拡大する」という研究成果が、The Journal of Physiological Sciences誌に掲載されました。

【研究のポイント】
 適度な運動が脳の機能を高めることが明らかになってきました。しかし、有酸素運動中にヒトの脳内でどのような応答が起こるのか、技術的な限界もあり、その全貌はまだ明らかにされていません。
 「目は口ほどに物を言う」とのことわざがあるように、古くから、目は精神状態を反映するとされています。近年は特に、瞳(瞳孔)の拡大・縮小の変化(応答)は脳の覚醒をもたらす神経活動を反映するとして、注目を集めています。運動負荷による瞳孔の応答を詳細に観察すれば、運動中の脳の覚醒状態が推定できる可能性があると考えられます。
 そこで本研究では、被験者に自転車ペダリング運動を行ってもらい、安静状態から限界に至るまで負荷を徐々に上げていくことに伴う瞳孔の応答を調べました。その結果、線形的(直線的)な運動負荷の増加に対する瞳孔の特徴的な(非線形的)応答パターンが明らかになりました。
 まず、非常に軽い強度において瞳孔は、安静状態よりも顕著に拡大しました。その後、負荷が増えるに従って変化が緩やかになります。そして、中強度を超えた付近から疲労困憊に至るまで、再び急激に瞳孔の拡大がみられました。この変化パターンは、心拍数や血中乳酸濃度など従来の運動生理学的指標とは異なるものです。瞳孔の変化が脳の覚醒をもたらす神経活動を反映することを踏まえると、運動負荷の増加に対応して脳の覚醒状態がどのように変化しているのかを表している可能性があります。その中でも、非常に軽い運動をした場合も瞳孔の拡大が確認できたことは、ヨガやウォーキングなどの軽運動でも脳の覚醒に関わる神経が活性化する可能性を示唆します。
 心拍数は今や、腕時計型のウェアラブルデバイスなどによって誰もが簡単に測れる生理学的指標として医療からスポーツ現場など幅広く利用されています。「心の窓」である瞳孔もまた、運動中の脳の覚醒状態の指標として応用可能となることが期待されます。

征矢英昭教授・ARIHHP副センター長(専門:運動生化学・神経内分泌学・スポーツ神経科学)
征矢英昭教授・ARIHHP副センター長(専門:運動生化学・神経内分泌学・スポーツ神経科学)

桑水隆多院生
桑水隆多院生

筑波大学プレスリリース

The Journal of Physiological Sciences

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