★藤井准教授、小野教授、吉村特任助教らによる論文がThe Journal of physiologyに掲載されました
藤井准教授、小野教授、吉村特任助教らによる論文がThe Journal of physiologyに掲載されました。
眼球運動は、外界から正確かつ安定した視覚情報を獲得するために脳によって精緻に制御されており、その動態は脳機能を反映する神経生理学的バイオマーカーとしても活用されています。一方、過換気は環境的・心理的ストレスや慢性疾患などによって生じ、動脈血二酸化炭素分圧の低下(低炭酸ガス血症)や脳血流量の減少を引き起こすことが知られています。しかし、このような過換気に伴う生理的変化がヒトの眼球運動制御に及ぼす影響については、これまで十分に検討されていませんでした。
本研究では、健常若年成人を対象に、過換気によって生じる動脈血二酸化炭素分圧の低下が安静時の眼球運動に与える影響を検討しました。その結果、過換気により、動脈血二酸化炭素分圧の指標である呼気終末二酸化炭素分圧が著しく低下し、それに伴って脳血流量も有意に減少しました。さらに、静止画像を自由に観察する free-viewing 課題では視線探索行動の低下が認められ、提示された視標と反対方向へできるだけ速く視線を向ける anti-saccade 課題では、反応潜時の有意な延長が確認されました。
以上のことから、過換気に伴う動脈血二酸化炭素分圧および脳血流の低下は、注視およびサッカード制御を減弱させ、眼球運動を低下させることが明らかとなりました。これらの知見は、ストレスや呼吸異常を伴う状況において視覚認知機能や実行機能が低下するメカニズムの理解に貢献するとともに、眼球運動測定が呼吸・脳循環状態の変化を反映する新たな評価指標となり得ることを示唆しています。
【題 名】How breathing disrupts vision: hyperventilation-induced hypocapnia impairs oculomotor responses in resting humans
【著者名】Yoshimura, Y., Sagawa, T., Ono, S., Nishiyasu, T., & Fujii, N
【掲載誌】The Journal of Physiology
【公開日】2026年2月4日
【DOI】 https://doi.org/10.1113/JP289870


