★藤井准教授、西保教授、片桐陽 (研究員) らによる論文がMSSEに掲載されました
暑熱下持久的運動時において、運動時間の経過とともに深部体温は上昇します。このとき、必要以上に呼吸も増加し (換気亢進反応という)、さらに脳血流量の減少を招きます。この換気亢進反応および脳血流量の減少は、暑熱下における運動パフォーマンス低下や熱中症発症の一要因である可能性が提唱されています。
本研究では、シャーベット状のような氷飲料である「アイススラリー」を暑熱下持久的運動前に摂取することで、常温の同飲料を摂取した場合と比較して、1) 運動中の深部体温が低下すること、2) 換気量が減少すること、3) 脳血流量指標が増加すること、が明らかとなりました。一方で、ある研究対象者はアイススラリーによって極度な胃腸障害 (主観的な腹痛や下痢感) が生じ、換気量の減少や脳血流量指標の増加はみられませんでした。興味深いことに、この研究対象者を除いた場合、アイススラリーによって運動終盤の持久性パフォーマンスが有意に向上しました。以上のことから、運動前のアイススラリーの摂取は、暑熱下運動中の換気亢進反応および脳血流量の減少を軽減し、持久性パフォーマンスの向上に有効であるかもしれませんが、その効果は胃腸障害が生じた場合には得られない可能性があります。
本研究の知見は、今後、暑熱下における運動中の換気亢進反応および脳血流量の減少を軽減し、運動パフォーマンス低下や熱中症の発生を防ぐ具体的方策の提案に貢献することが期待されます。
【題 名】Ice Slurry Mitigates Hyperventilation and Cerebral Hypoperfusion, and May Enhance Endurance Performance in the Heat
【著者名】Akira Katagiri, Syuntaro Kawai, Takeshi Nishiyasu, Naoto Fujii
【掲載誌】Medicine & Science in Sports & Exercise
【公開日】2025年2月3日
【DOI】10.1249/MSS.0000000000003662
Medicine & Science in Sports & Exercise