★【プレスリリース】徳山教授らが不眠症治療薬の研究成果を発表
オレキシン研究から生まれた新しい不眠症治療薬の優位性が明らかになる 〜オレキシン阻害薬と GABA 作動薬が身体機能と認知機能に及ぼす影響の比較検討〜
ARIHHPの徳山薫平教授( 国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS))らの研究グループが行った、オレキシン阻害薬とGABA作動薬の身体機能と認知機能に及ぼす影響を検討した結果が、米国科学アカデミー紀要「Proceedings of National Academy of Sciences of the United States of America(PNAS)」に11月11日付(米国時間)でオンライン公開されました。
従来の不眠症治療薬であるGABA作動薬には、服用後の身体機能と認知機能を損なうという副作用があり、服用者が緊急事態の発生や排泄などのために就寝中に目覚めて行動する時に、転倒してしまうといった懸念があります。不眠症治療薬を服用していない場合でも、覚醒直後にはぼんやりした状態が続きますが、脳に広範に分布する抑制系に働きかけるGABA作動薬は、これを更に悪化させることが指摘されてきました。一方、2014年に臨床応用が開始されたオレキシン阻害薬は、脳の覚醒系に選択的に作用するので、身体機能と認知機能への副作用は少ないと期待されていました。本研究では、不眠症治療薬(オレキシン阻害薬またはGABA作動薬)を投与し、その血中濃度がピークとなっている時点で被験者を強制覚醒させ、身体機能と認知機能を測定する実験を、30名の被験者の協力を得て行いました。その結果、覚醒の維持に重要な物質であるオレキシンの働きをブロックすることで、入眠と睡眠状態の維持を促すオレキシン阻害薬は身体機能と認知機能を低下させる作用が少なく、特に平衡機能への副作用が小さいことがわかりました。
図 実験プロトコール
不眠症治療薬服用前の19:30に身体機能と認知機能のテスト(Pre 測定)を行い、22:45に不眠症治療薬を服用して23:00に就寝、00:15に起きてもらい直ちにテスト(Post測定)を行った。00:40に再び就床して8:00まで就寝し、起床後30分に最後のテスト(Follow測定)を行った。
なお、本研究はARIHHPが受託しているスポーツ庁委託事業「スポーツ研究イノベーション拠点形成事業(SRIP)」の一環として行われました。
<掲載論文>
【題 名】
Distinct effects of orexin receptor antagonist and GABAA agonist on sleep and physical/cognitive functions after forced awakening.
(レシン受容体阻害薬と GABAA 作動薬が睡眠および身体機能と認知機能に及ぼす影響の違い)
【著者名】
JaehoonSeol,YuyaFujii,InsungPark,YokoSuzuki,FusaeKawana,KatsuhikoYajima,ShojiFukusumi, Tomohiro Okura, Makoto Satoh, Kumpei Tokuyama, Toshio Kokubo, Masashi Yanagisawa.
【掲載誌】
Proceedings of National Academy of Sciences of the United States of America
<問合わせ先>
筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)広報連携チーム
住所
〒305-8575 茨城県つくば市天王台1-1-1 睡眠医科学研究棟
wpi-iiis-alliance@ml.cc.tsukuba.ac.jp
電話
029-853-5857