★藤井准教授、西保教授、片桐研究員らによる論文がMSSEに掲載されました
飲食料品などから日常的に摂取されるカフェインは、運動パフォーマンス向上に有効であることが広く知られていますが、近年、暑熱環境下ではその効果が得られない可能性が指摘されています。本研究グループはこれまでに、暑熱下での運動前にカフェインを摂取すると、深部体温上昇に伴う過度な呼吸(高体温誘発性換気亢進)や、それに起因する脳血流の低下反応などの生理的ストレスが増大することを明らかにしています (Fujii et al. Med Sci Sports Exerc 2020)。これらの生理応答は、血中カフェイン濃度が運動前から急激に上昇することで引き起こされ、カフェインの有益な効果を打ち消している可能性があります。
本研究では、健常な若年男女を対象に、暑熱下での長時間運動において、運動途中に中用量のカフェインを摂取したときの効果を調べました。その結果、運動時の血中カフェイン濃度は徐々に上昇し、運動終盤に実施した高強度運動の継続時間が延長しました。また、高強度運動の直前には、運動の主観的なきつさが軽減されました。一方で、運動時の高体温誘発性換気亢進反応や脳血流低下反応は、カフェイン摂取によって増大することはありませんでした。
以上のことから、暑熱下においては、カフェインを運動中に摂取することで、運動時の生理的ストレスを増大させることなくカフェインの有益な効果が発揮され、パフォーマンスの向上につながると考えられます。ただし、パフォーマンスが向上した場合には結果的に仕事量が増加するため、運動終了時の深部体温や呼吸・循環系への負荷が増大するリスクに留意する必要があります。
https://www.tsukuba.ac.jp/journal/medicine-health/20250625141500.html
Medicine & Science in Sports & Exercise